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NEWS  RELEASE   

 

 


平成20年6月10日

広島大学主導で開発した高性能センサーを搭載した

画期的なガンマ線衛星がNASAから打ち上げられます。

広島大学が中心となり、東京工業大学やJAXA宇宙科学研究本部などと共同開発した、超新星爆発やガンマ線バーストなどの現象を捕らえる高性能ガンマ線センサーが、宇宙ガンマ線望遠鏡衛星(GLAST:Gamma-ray Large Area Space Telescope)に搭載する望遠鏡に採用され、日本時間6月12日早朝(0:45-2:40)に、NASAによってケープカナベラル空軍基地から高さ560kmの円軌道に打ち上げられます。 

 今回開発したセンサーは、大きさ9センチ×9センチで、GLAST衛星の望遠鏡に約1万枚使用されています。このセンサーで宇宙ガンマ線を観測することにより、目(可視光)で見える宇宙の姿より遙かにダイナミックな現象を、数多く発見することができるとともに、その現象の機構解明が期待されます。日本の貢献は、高エネルギー加速器研究機構(KEK, 日米科学技術協力事業)、文部科学省(科学研究費)、広島大学、理化学研究所、JAXA/ISASの支援を受けて行われました

 GLAST宇宙ガンマ線望遠鏡衛星は、米国や日本など6カ国が参加する国際共同開発プロジェクトとして開発が進められ、高性能センサーの開発が、成功への鍵の一つであったことから、センサーの製作責任者である広島大学の大杉節特任教授に対して、NASAから感謝状が贈られました。

広島大学では、宇宙科学センターと東広島天文台が、GLAST宇宙ガンマ線望遠鏡開発計画と密接に連携しており、今後しばらくは、GLASTと連携を図った観測研究活動に専念します。

 

日本GLASTチームのホームページ

URL: http://www-heaf.hepl.hiroshima-u.ac.jp/glast/glast-j.html

日本の主要メンバー:大杉節、深澤泰司、水野恒史、片桐秀明(以上、広島大学)、

高橋忠幸、尾崎正伸(以上JAXA/ISAS)、河合誠之(東京工業大学)

       準メンバー:牧島一夫(東京大学)、福井康雄(名古屋大学)、山崎了(広島大学)

 

 

解説

GLAST宇宙ガンマ線望遠鏡衛星(以下、GLAST衛星)は、米国、日本、イタリア、フランス、スウェーデン、ドイツの6カ国が参加する国際共同開発プロジェクトとして開発され、NASAがケープカナベラル空軍基地から日本時間6月12日早朝(0:45 2:40)に打ち上げる。衛星の重量は約4.3トンで、高度約560kmの円軌道に打ち上げられる。NASAが打ち上げる大型科学衛星シリーズのなかで、最も野心的な宇宙観測衛星の一つである。このGLAST衛星には、広島大学の研究者が鍵となる半導体センサーを開発し供給している。

日本の参加は、10年以上前に、当時東京大学教授であった(現スタンフォード大学SLAC研究所教授)の釜江常好と広島大学助教授であった大杉 節が、米国の研究者仲間からそれぞれ独立に参加を要請され、直ちに日本グループを立ち上げた。現在、日本から広島大学、JAXA/ISAS、東京工業大学の研究者がフルメンバーとして、東京大学、名古屋大学もメンバーとして参加している。日本グループの代表は、広島大学宇宙科学センター長の大杉節特任教授が務めている。

GLAST衛星の特徴

高エネルギーガンマ線領域を初めて本格的に観測する衛星で、高エネルギーガンマ線が電子とその反物質である陽電子の対に変わる素粒子反応(電子・陽電子対生成)を利用した望遠鏡を搭載する。日本の誇る、高性能半導体ストリップ・センサーを主要エレメントとして用い、高感度、広視野、高位置分解能で、その上速い時間変動を分離観測でき、画期的な高性能、高信頼度ガンマ線望遠鏡となっている。

組上がったGLAST衛星。両側に折り畳まれた太陽電池パネルが見える (NASA提供)

 

ロケット頭部に収まったGLAST衛星(NASA提供)

 

観測天体

GLASTの観測対象は、ブラックホール、ガンマ線バースト、パルサー、超新星残骸など宇宙で最も激しく活動し高エネルギーガンマ線を放射する天体である。我々の体を構成している各種元素も星の中で核融合反応により合成され、上記の様な高エネルギー現象で宇宙にばらまかれたと考えられている。GLAST衛星による宇宙ガンマ線観測によって、目(可視光)で見える宇宙より遙かにダイナミックな現象が沢山発見されると共に,その現象の仕組みも解明が期待される。また宇宙において銀河を束ねる重力の大部分を担うにも関わらず見えない謎の物質である暗黒物質を宇宙ガンマ線により見つける可能性も期待される。

 

日本の重要な貢献

GLAST衛星に搭載された「ガンマ線大面積望遠鏡(LAT)」の主構成エレメントである大面積半導体ストリップ・センサーを、広島大学の大杉特任教授が設計し、浜松ホトニクス(株)の協力を得て開発した。開発したセンサーは性能及び品質が抜群であったことに加え、過去の開発実績が充分認知されていたため、他の候補を押さえてLAT望遠鏡に採用された。その結果として、衛星用センサー製作責任者に大杉特任教授が指名され、浜松ホトニクス(株)で製作されることになった。1万1千枚の大面積センサーの検査と品質管理を広島大学中心に行った。日本が開発製造した高性能・高品質のセンサーはGLAST衛星実現の鍵の一つであったことから、この貢献に対してNASAから大杉特任教授および浜松ホトニクス(株)に感謝状が贈られた。

GLASTストリップ・センサー写真(中央の正方形部分)フライトモデル ※実物大

大杉特任教授が設計し、浜松ホトニクスが製作したストリップ・センサー約1万枚がLATガンマ線望遠鏡に使用されている (広島大学提供)

 

 

GLAST衛星と広島大学宇宙科学センター及び附属東広島天文台

広島大学宇宙科学センター及び東広島天文台は、GLAST宇宙ガンマ線望遠鏡開発計画と密接に関連している。国立天文台にあった赤外シミュレーターと称した1.5m光学望遠鏡(すばる望遠鏡の観測装置開発・試験用として作られた)の任務完了後の有効利用に、広島大学がGLAST衛星との突発・激動天体の連携観測用望遠鏡として活用する案を提案した。ねばり強い説得と国立天文台長の英断で、その望遠鏡は法人化直前に広島大学に移管された。望遠鏡の運用を担う組織として宇宙科学センターが平成16年4月設置され、東広島市の協力を得て、東広島天文台が東広島市西条町下三永の山頂に平成18年5月に開所した。

 東広島天文台の観測対象は、ブラックホールや中性子星等の関与する激変天体現象、超新星爆発、宇宙で最も大きな爆発現象ではないかと考えられている謎のガンマ線バーストなどの突発天体の機動的観測である。この様な突発・激変天体観測専用に準備された、可視・赤外線の同時観測及び偏光観測の出来る装置を有する望遠鏡は、日本では初めてであると共に世界的にも非常にユニークな存在である。GLAST衛星打ち上げ後はしばらくGLAST関連観測・連携観測に専念する。

東広島天文台スタッフ: 山下卓也教授、川端弘治助教、植村誠助教

URL: http://hasc.hiroshima-u.ac.jp/glast/glast_hho.html

 

 

【お問い合わせ先】

広島大学宇宙科学センター長 大杉 節

電話:082−424−7387

E-mailohsugi@hirax7.hepl.hiroshima-u.ac.jp

 発信枚数:A4版 3枚(本票含む)