新種のガンマ線銀河を発見
                         2009年5月30日発表

早稲田大学理工学術院の片岡淳准教授と、広島大・東工大・ JAXAの研究グループは、米国 NASAをはじめとする国際共同研究 により、新種の「ガンマ線銀河」を2つ発見しました。ガンマ線は極端に波長の短い電磁波の一種で、我々の目で見える可視 光の約10億倍の高いエネルギーをもちます。このような高エネルギーで宇宙を観測することはこれまで困難でしたが、 昨年6月に打ち上げられたフェルミガンマ線宇宙望遠鏡の活躍で、激動する宇宙の姿が続々と明らかになりつつあります。 今回の「ガンマ線銀河」も、従来よりも数十倍深い全天探査で初めて見えてきた天体です。われわれの銀河系を含め、多く の銀河中心には太陽の 100万倍を超えるブラックホールが存在すると考えられます。銀河からのガンマ線は、ブラックホ ールに落ち込んだ物質が何らかの作用で光速に近い粒子ビームを生成し、そのビームが我々の視線方向を向くという、 極めて稀な状況でのみ観測されると考えられてきました。しかしながら、今回発見された2つの銀河は(1)そもそも強い 粒子ビームを持たない(PMN J0948+0022)、あるいは(2)ビームが視線方向から大きくずれており( NGC1275)、 その意味では「ありふれた」銀河です。とくに、今回初めてガンマ線放射が見つかった NGC1275は非常に明るく、もし同じ 明るさを保っていれば、過去のコンプトン衛星(1991-2000年)でも十分検出できたはずです。これは粒子ビームが10年 ほどの時間スケールで新たに生成・消滅することを示唆します。新種のガンマ線銀河の発見によりフェルミガンマ線 宇宙望遠鏡は天文学の新しい窓を開いたと言えるでしょう。
なお、この成果は “NASA'S FERMI Finds Gamma-ray Galaxy Surprises” (NASAのフェルミ衛星による、新種ガンマ線 銀河の思いがけない発見 )として、NASAウェブサイト
(Web Feature=http://www.nasa.gov/mission_pages/GLAST/news/galaxy_surprise.html)
に掲載されています。 また、5月28日に早稲田大学にて記者会見(片岡、深沢)を行っています。

プレスリリース 資料1 資料2
記者発表資料

フェルミ衛星が初めてとらえた活動銀河NGC1275からのガンマ線放射(中心)。NGC1275 は2.3億光年離れたペルセウス銀河団の中心銀河であるが、先代コンプトン衛星では検出できなかった。フェルミ衛星の観測までの約10年の間に、粒子ビームが著しく増強したと考えられる。


活動銀河PWNJ0948+0022(中心)からのガンマ線放射。中心ブラックホールから高速な粒子ビームが放出されている確かな証拠。このクエーサーは55億光年遠方にあり六分儀座に位置する。