フェルミ衛星によるガンマ線天体第2カタログ公表
2011年9月14日発信
フェルミ衛星は、打ち上げ後3年間が過ぎ、衛星や観測装置のトラブルもなく順調に高感度の観測を続けています。このたび、2年間のデータを解析して検出されたガンマ線天体の第2カタログを我々フェルミチームが公表しました。以下のグラフに示しますように、いろいろな種類の天体が含まれており、検出された天体も、従来の衛星による270個から1873個に増加し、ガンマ線天文学が発展しつつあることがわかります。これらは、ほぼ定常的に輝いているものです。半数近くは、ブレーザー天体と呼ばれる活動銀河核であり、銀河の中心に潜む巨大質量ブラックホール周辺から噴き出すジェットを真正面から見ている天体と考えられています。この他、ガンマ線バースト、太陽フレアなど、ある時だけ突発的に明るくなって検出される天体も見つかっています。こうして検出された天体のガンマ線における性質の一覧がカタログとして公開され、宇宙を研究する全世界の研究者に広く利用されています。
関連した記事がNASAウェブサイト (Web Feature)に掲載されています。
以下、上の図がフェルミ衛星の2年間の観測で得られた、1GeV(10億電子ボルト)以上のエネルギーを持つガンマ線による全天ガンマ線地図(高解像度の図は、こちら)。特に興味深い天体は○印がついている(以下に説明を載せています)(credit:NASA/DOE/FermiLAT
Collaboration)。下は検出されたガンマ線天体の内訳。(Credit:NASA)。
特に興味深い天体の説明。この他にも重要な天体が多く見つかっていますが、説明は割愛します。
- かに星雲(Crab Nebula):西暦1054年に発生した超新星の現在の姿。あらゆる電磁波で明るいので、詳細に調べられている。フェルミ衛星により、数日間だけ急激にガンマ線で明るくなる現象が数回ほど発見されており、話題を集めている。
- 超新星残骸 W44:約2万年ほど前に発生した超新星爆発の現在の姿。フェルミ衛星の名前の由来となったエンリコ・フェルミ博士が予言した宇宙での粒子加速が起きていると考えられている場所であり、実際に、フェルミの観測により、陽子が加速されている兆候が得られた。
- 新星 NOVA V407 Cygni:軽い星の終焉である白色矮星と普通の恒星の連星。2010年3月に新星爆発が日本のアマチュア天文家によって発見され、その後、フェルミ衛星でガンマ線を放射していることがわかった。新種のガンマ線天体の1つ。
- パルサー PSR J0101-6422:フェルミ衛星により、100個を超えるパルサーからガンマ線パルスが検出された。これも、その1つであり、電波の観測チームとフェルミチームの強力な連携研究によりガンマ線パルスが発見された。
- ガンマ線天体 2FGL J0359.5+5410:きりん座で見つかったガンマ線天体だが、他の電磁波で対応する天体が見つかっておらず、正体不明。我々の銀河の中に存在すると考えられ、ガンマ線の性質はパルサーに似ている。
- 電波銀河ケンタウルス座A (Cen A):我々から比較的近い銀河NGC5128。活動銀河核を持つ。フェルミ衛星により、銀河中心付近からのガンマ線を放射していることが決定的となり、さらに、銀河の南北方向に数100万光年に伸びている巨大な電波ローブもガンマ線で光っていることがわかった。
- アンドロメダ銀河 (M31):我々の銀河から約230万光年の距離にある隣の銀河。ガンマ線が放射されていることがフェルミ衛星により初めて分かった。
- スターバースト銀河 M82:銀河どうしの相互作用により、一時的に星が大量に生まれている銀河。大量の星が生まれ、そして爆発した結果、大量の宇宙線が加速され、ガンマ線で輝いていると予想されていたが、フェルミ衛星により、ガンマ線を放射していることが決定的となった。
- ブレーザー天体 PKS 0537-286:ガンマ線が見つかったブレーザー天体のうち距離がわかっているものの中で、最も遠いのもの。117億光年の距離に存在する。フェルミ衛星によりガンマ線が発見された。
- ガンマ線天体 2FGL J1305.0+1152:おとめ座で見つかったガンマ線天体だが、正体不明。パルサーともブレーザーとも異なるガンマ線の性質をもつ。