フェルミ衛星が検出したガンマ線パルサーが100を超える

2011年11月5日発信

パルサーとは高速回転する中性子星のことで, 電波からガンマ線まで広い波長域に渡り周期的な放射をします。 フェルミ衛星は2008年の打ち上げ以来、その高い性能を生かしてパルサーを続々と検出してきており、 このたびガンマ線パルサーの数が100の大台に乗りました。

最近フェルミ衛星が検出したガンマ線パルサーの一つPSR J1823-3021Aは球状星団NGC6624中に位置し、 周期が0.0053秒(一秒に183回)という高速の回転をしている「ミリ秒」パルサーでした。 回転の変化率から求められたパルサーの年齢は約2500万年でしたが、 この年齢は今までに知られているミリ秒パルサーの中では最も若く(典型的なミリ秒パルサーの年齢は数億〜数十億年)、 また放射するガンマ線強度も一番強いものでした。 実際、この球状星団には他に少なくとも5個のミリ秒パルサーがあることが電波観測から知られていますが、 NGC6624から観測されるガンマ線はほとんどすべて、PSR J1823-3021Aによるものです。 球状星団は生まれてから100億年たっている非常に古い星の集まりで、 その中でミリ秒パルサーは他の星から降りつもってくるガスの勢いによって長い年月をかけて 回転が速くなったものだと考えられていました。 PSR J1823-3021Aは、そのような普通のミリ秒パルサーとは全く異なった性質を持っているのです。 このパルサーの年齢が若いことは電波の観測からも示唆されていましたが、 今回フェルミ衛星が強いガンマ線パルスを検出したことにより、ゆるぎないものとなりました。

フェルミが検出した100個のパルサーの中には、 ガンマ線のみで周期放射が見つかっているパルサーも数多く含まれます。 電波やX線など他の波長域でのパルス信号の情報に頼らない「ブラインドサーチ」と呼ばれるやり方では、 今回新たに9つのパルサーが発見されました。この手法で見つかったパルサーの数は実に30を超え、 そのほとんどは今でも他の波長でパルスが見つかっていない「ガンマ線のみでパルス放射する天体」です。 パルサーの放射機構の理解に果たすフェルミ衛星の役割が大きいことを物語っています。
日本のフェルミチームは、フェルミ衛星によって新たに発見されたガンマ線パルサーに対して 日本の「すざく」衛星を用いてX線観測を行い、その性質を詳しく調べる研究も進めています。

関連した記事がNASAウェブサイト に掲載されています。

下図はフェルミ衛星による全天マップ中にガンマ線パルサーの位置を示した物です。 (Credit: NASA/DOE/Fermi LAT Collaboration)
四角はフェルミ衛星が初めて発見したパルサーです。 クリックするとオリジナルのページへ飛び、個々のパルサーの説明を見ることもできます。