はくちょう座に宇宙線の「繭(まゆ)」を発見

2011年11月25日発信

フェルミ衛星は「はくちょう座」の方向に、作られたばかりの宇宙線が あたかもカイコの「繭(まゆ)」のような形状で閉じ込められているのを発見しました。 宇宙線は超新星爆発(大質量星が一生の最後に起こす大爆発)に伴い発生する衝撃波で加速されると 考えられていますが、作られた宇宙線がどのように星間空間に広がっていくかはよく分かっていません。 従って今回の発見は、宇宙線の星間空間への注入を研究する上で貴重な情報となります。 この成果は サイエンス誌 に掲載されました。

宇宙線は、光に近い速さで宇宙空間を飛び交う粒子の総称で、 発見以来100年たった今でも、その起源は完全には理解されていません。 宇宙線の多くは超新星爆発に伴い発生する衝撃波で加速されると広く考えられていますが、 作られた宇宙線がどのように星間空間に広がっていくかはよく分かっていませんでした。
「はくちょう座X」は「はくちょう座」の方向に位置する星生成の盛んな領域で、 太陽の10倍以上の質量を持つ大質量星が数多く存在します。 このような環境では、 星の表面から吹き出す強いガスの流れ(星風)や高い頻度で起きる超新星爆発のため、 宇宙線が多く作られると予想されていました。大質量星はまた、強い紫外光を出し、 周りのガスを電離しまた加熱します。下図右は赤外線のイメージで、 濃く見えるのがガスの密度の高いところ、それらに取り囲まれた領域は密度の低い「空洞」で、 高温で低密度のガスに満たされています。フェルミ衛星が検出した強いガンマ線放射の形状 はこの「空洞」とよく一致します(下図左)。
ガンマ線は宇宙線と周りのガスまたは光子が反応して生じるので、 2つのイメージの類似は、 カイコの「繭(まゆ)」のような形状をしたガス密度の薄い空洞に宇宙線が閉じ込められていることを 示唆します。星生成活動に伴い生じた衝撃波が星間磁場をかき乱した結果、 やはり星生成活動で作られた宇宙線が効率良く閉じ込められていると解釈されます。 この宇宙線はさらに長い年月をかけて、星間空間へと広がっていくだろうと予想されます。

関連した記事が NASAウェブサイトに掲載されています。

下左図は「はくちょう座」の方向にフェルミ衛星が発見したガンマ線超過放射で、 加速されたばかりの強い宇宙線が、周りのガスまたは光子と反応して生じたものです。 宇宙線がカイコの「繭」のような形状に閉じ込められていることが分かります。
下右図は赤外線のマップで、放射が弱い黒色の部分は、ガスの密度が薄いところを表します。 宇宙線は、この「空洞」を満たすように分布しています。 またこの付近に存在する大質量星の集まりや星団を白の円および楕円で示しています。
(Credit: I. Grenier (Fermi LAT/AIM/U. Paris Digerot/CEA) and L. Tibaldo (Fermi LAT/U. Padova/INFN))