初期宇宙の銀河や星の可視光紫外線の量をガンマ線でプローブに成功


                         2012年11月2日発表

 今から約120〜130億年前の宇宙初期に、初めての星や銀河が形成され始めたと考えられています。それら初期の銀河や星は可視光、赤外線、紫外線で明るく輝き、その光は宇宙を満たしていたと考えられ、系外背景光(EBL: Extragalactic Background Light)と呼ばれています。この光の量や分布を調べることによって、宇宙初期に星や銀河がどのように形成されてきたのかの情報を得ることができます。しかし、紫外線は宇宙に漂うガスに吸収されやすいため観測しにくいこと、また可視光や赤外線の望遠鏡も空一面に広がっているような系外背景光を観測するのは不得意であるため、これまで系外背景光の測定は精度良く行われてきませんでした。これに対して、そうした系外背景光が満たした宇宙の中を高エネルギーガンマ線が進むと、ある確率でガンマ線と背景光が衝突して(電子と陽電子が生成されて)ガンマ線が消えてしまうことを利用して、ガンマ線を観測することで系外背景光をプローブすることができると予想されていました。今までも、1兆電子ボルト以上の高エネルギーガンマ線による観測はなされてきましたが、これくらいエネルギーが高いと衝突確率が大きいため、遠くの天体からのガンマ線はほとんど消えてしまって我々まで届かず、近い天体しか見えないため、宇宙初期の系外背景光による影響を調べることが困難でした。そのため、もう少しエネルギーの低いガンマ線での観測が待たれていました。今回、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡により、1憶電子ボルトから数1000億電子ボルトのガンマ線を観測することによって、打ち上げから約4年間に観測された約150個の遠方のブレーザー(クエーサーの一種)からのガンマ線を調査した結果、遠方のブレーザーからのガンマ線ほど系外背景光の影響を受けて、高エネルギーガンマ線が衝突で消えてしまっている兆候を初めて捉え、影響を定量化することに成功しました。これにより、宇宙初期の銀河や星からの可視光紫外線の量をプローブするためのデータが初めて精度良く得られたことになり、今後さらなる観測や理論的考察が進めば、宇宙初期の銀河や星の形成の様子が理解できると期待されています。

この観測結果は2012年11月1日(木)付けの 米国サイエンス誌 に掲載されました。 また、この成果は、NASAでプレスリリースが行われました(NASA Web Feature).。(フェルミ衛星は、広島大学を中心とした日本チームが開発に大きく貢献し、平成20年6月にNASAに より打ち上げられました。)