地球で発生する謎のガンマ線放射の正体に迫る


                         2012年12月20日発表

  フェルミ衛星に搭載されたガンマ線バースト検出器は、地球方向から到来する明るいガンマ線放射を大量に観測し、 高い時刻決定精度を活かすことでガンマ線放射の一部が雷の発生と同期していることを明らかにしました。ガンマ線放射と 雷との関連が明らかになったことで、今後この地球からやってくる謎のガンマ線放射の正体解明が大きく進むことと期待されます。


フェルミ衛星が観測しているガンマ線は、ブラックホールやパルサーなど、地球から遠く離れた高エネルギー天体が主な放射源ですが、実は我々の地球からもガンマ線が放射されています。その一種が Terrestrial Gamma-ray Flash (TGF) と呼ばれるもので、非常に明るいガンマ線が千分の1秒以下という極めて短い時間に発生します。この現象は90年代初頭に発見されました。このようなガンマ線が放射されるには電子が高いエネルギーまで加速される必要があり、発見当初、多くの研究者はそのような電子加速現場として雷雲が関連しているのではないかと考えました。しかし、千分の1秒以下しか光らないTGFと雷雲との関連を示すことは非常に難しく、TGFの正体についてはっきりとしたことは分かっていませんでした。フェルミ衛星には、ブラックホールやパルサーからの数1000万電子ボルト以上のガンマ線を観測する装置とは別に、ガンマ線バーストやTGFの観測に特化した数万電子ボルトから数100万電子ボルトのガンマ線を検出する装置(GBM)が搭載されており、TGFが発生した時刻を決定する精度に優れています。フェルミ衛星は2010年10月からTGFの発生頻度が高い場所で時刻精度の高いデータを取得する新しい運用を開始し、地上解析で徹底的にTGFがあるかどうか調べました。その結果、2011年8月までのデータから約600個ものTGFを発見しました。これらのデータと雷雲との関連を調べるため、雷と同時に生じる電波と時刻と場所が一致するかどうか調べたところ、3割のTGFで電波と同期していることが明らかになりました。これほどのサンプルでTGFと雷で生じる電波との一致が確認されたのは初めてのことです。このことから一種のTGFと雷との関連はいっそう強まったことになり、今後の観測により、TGFの正体に迫ることができるようになるでしょう。
関連した記事が NASAウェブサイトに掲載されています。 (フェルミ衛星は、日本チームが開発に大きく貢献し、平成20年6月にNASAに より打ち上げられました。)


雷雲で電子が加速され、ガンマ線が放射される仕組み(の一説)の模式図。