近所で爆発した宇宙のモンスター:ガンマ線バースト
2013年11月22日発表
2013年4月27日に我々の銀河に比較的近く、強烈に明るいガンマ線バーストが起きました。フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡による観測によって詳細なデータが取得され、その結果、従来の標準的な「残光」放射モデルに疑問が投げかけられることとなりました。この発見は、米国科学誌「サイエンス」11月22日発行号に掲載されました。
今回のバーストの観測的な特徴
図1: フェルミ望遠鏡が観測したガンマ線放射の時間進化。横軸が時間(秒)。上からガンマ線の明るさ、スペクトル指数、検出されたガンマ線一つ一つのエネルギー。(Ackermann et al. 2013 Scienceより転載。)
残光放射モデルの再考
従来の残光放射モデルは以下の通りです。巨星の爆発に伴い、光速に近い速度で噴出したガスは、星の周りのガスと衝突する事で衝撃波を形成し、徐々に減速していきます。この衝撃波によって加速された高エネルギー電子からのシンクロトロン放射が残光として観測されます。しかし、シンクロトロン放射で放てる光子のエネルギーには理論的な限界があります。今回のバーストからは爆発244秒後に95ギガ電子ボルト、9時間半後に32ギガ電子ボルトのガンマ線が検出されています。こうした高エネルギーのガンマ線は、この理論的限界を超えているので、噴出ガス自体の運動によるドップラー効果(光速に近い速度で近づいてくる物体からの放射は高エネルギーになる)が必要となります。爆発から10時間近くに渡ってガスが減速していなければ、これらのガンマ線をシンクロトロンで説明できますが、エネルギー保存の簡単な見積りから、要求される速度を保つのは不可能であることがわかります。これらの事情から、ガンマ線はシンクロトロンとは異なったメカニズムで放射されている可能性が出てきました。ガンマ線の明るさは滑らかな進化を見せており、途中で放射メカニズムが変わった兆候は見られません。この後期ガンマ線放射はガンマ線バーストの大きな謎を残す事となりました。
NASAのウェブサイトに掲載された記事
論文名:Fermi-LAT Observations of the Gamma-ray Burst GRB 130427A(サイエンス誌論文)
日本人著者:浅野勝晃、花畑義隆、林田将明(東京大学宇宙線研究所)、深沢泰司、河野貴文、水野恒史、大野雅功、大杉節、高橋弘充 (広島大学)、井上芳幸(スタンフォード大学 & SLAC国立加速器研究所)、奥村曉、田島宏康(名古屋大学)、山崎了(青山学院大学)