フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が発見したガンマ線を放射する新種天体
                         2014年7月31日発表

フェルミガンマ線宇宙望遠鏡は、Novaと呼ばれる新星爆発からガンマ線が普遍的に放射されることを明らかにしました。

本研究成果は、サイエンス誌 2014年8月1日号に掲載されました。また、NASAからプレスリリースも行われました。


論文タイトル: Fermi establishes classical novae as a distinct class of gamma-ray sources
Science 345: 554-558, 2014 (論文のリンク)。なお、同じ論文はプレプリントサーバーarXiv:1408.0735からも自由にダウンロードし、ご覧頂けます。
日本人著者: 深沢泰司、水野恒史、大杉節、高橋弘充 (広島大学)、林田将明(東京大学宇宙線研究所)、田中孝明(京都大学)、内山泰伸(立教大学)


本研究成果の概要

  1. 広島大学をはじめとする日本の大学・研究機関が、開発・運用に大きく貢献しているフェルミガンマ線宇宙望遠鏡 (以下ではフェルミ衛星と呼ぶ) は、2008年6月の打ち上げに打ち上げられましたが、現在まで問題もなく順調にガンマ線領域で観測を継続しています。
  2. 宇宙では「新星」と呼ばれ数日で1万倍以上も明るくなる現象が知られており、我々の銀河系内では年間10個程度発見されています。下の図1に示しているように、これは、太陽のような星と白色矮星の連星系において、星から白色矮星の表面に降り積もった物質における爆発的な熱核融合反応であると考えられています。この爆発により、降り積もった物質は秒速数千キロメートルの速度で吹き飛ばされます。
  3. フェルミ衛星は、4つの新星爆発からガンマ線を検出し、新星爆発が新しくガンマ線を放射する種族であることを明らかにしました(図2参照)。

なお、2010年の新星爆発に伴うガンマ線の検出は、2011年に既にサイエンス誌に発表されており、プレスリリースも行われました(リンク)。その後、3つの新星爆発からもガンマ線が検出されたため、ガンマ線を発する種族として確立した点が、本研究成果の主要なポイントのひとつとなっています。

  1. ガンマ線放射はどれも、2-3週間のあいだフェルミ衛星によって検出されました。計測されたガンマ線のスペクトルと呼ばれるエネルギー分布も、ソフトであることが見出されました。

  1. 新星爆発からガンマ線が放射されることは理論的にも予言されていなかったため、本研究成果は大きなインパクトを与えました。本発見は、新星爆発に伴う質量放出によって、粒子が高エネルギーにまで普遍的に加速されていることを示しています。




図1:新星爆発の想像図。新星爆発は、ここに描かれているような太陽に似た星と白色矮星(左側に描かれているコンパクトな天体)の連星系で発生する。爆発によって吹き飛ばされる物質がマゼンタで描かれている(NASAのウエブページより転載)



図2:フェルミ衛星が取得した100メガ電子ボルト以上のイベントのカウントマップ。各々の中心は新星爆発の位置で、銀河座標で表示されている。(サイエンス誌より転載)