重力波と思われる信号とほぼ同時刻にフェルミ衛星GBM検出器がガンマ線信号を報告
                         2016年2月13日発信 (6月10日修正 *注1)

重力波は,アインシュタインの一般相対性理論が予言する波で,重力の変化が時空の波として伝搬する現象です。この波の検出を目指して,世界各地で重力波観測装置が建設され,観測も進められています。日本国内にも,神岡地下にKAGRAという観測装置があり、まもなく稼働を開始すると言 われています。しかし,これまで重力波が直接検出された例はありませんでした。

2015年9月14日にアメリカの重力波観測装置LIGOが重力波と思われる信号を検出した,という発表が日本時間2月12日深夜になされました。そして、その信号に対して,0.4秒後にフェルミ衛星搭載GBM検出器(ガンマ線バーストモニター)が突発的な弱いガンマ線信号を捉えたという報告がありました。到来したガンマ線の方向は,重力波が来た方向と矛盾していませんでした。ガンマ線信号の様子は,これまでも多数検出されているショート・ガンマ線バーストという約1秒間だけガンマ線が検出される現象と似ていました。こうした事象がたまたま同時刻に偶然現れて検出される確率は0.22%と計算され、重力波を出した天体がガンマ線も出した可能性が考えられます。一方で統計的ゆらぎの可能性も否定できず、活発な議論が進められています。もし本当にガンマ線信号だとすると、重力波を出した天体とショートガンマ線バーストとの関係が示唆されます。今のと ころ,ショートガンマ線バーストが何であるのかはわかっておりませんが、中性子星どうし、あるいは中性子星とブラックホールの合体という仮説が提唱されています。一方、LIGOで検出された重力波信号の様子から質量30倍程度の2つのブラックホールの合体だろうということが報告されており、それが本当だとすると、ガンマ線は観測されにくいと言われています。今後の観測の進展が期待されます。

フェルミ衛星GBMチームの著者たちは,この成果についてのプレプリント報告を発表しました。プレプリントはこちら
なお、フェルミ衛星の主望遠鏡であるLAT検出器は、GBMより1000倍以上エネルギーの高いガンマ線を検出できますが、上の現象が視野の外だったため、有意な信号は検出していませんでした。これについても、LATチーム(注2)はプレプリント報告を出しました。

(注1) 本記事は2016年6月1日にフェルミ衛星GBM検出器による信号の妥当性を議論した新しい解析結果が発表されたことを受けて、2016年6月10日に修正いたしました。
(注2) フェルミ衛星にはLAT検出器とGBM検出器という2種類の検出器が搭載され、独立のチームによってデータ解析・成果発表が行われています。日本フェルミ衛星グループはLATチームに所属しますが、本記事の内容は天文学的に重要な内容であることから、GBM検出器による結果ではあります が、公表論文にもとづいて情報発信を行いました。