next up previous
次へ: 銀河団中心部の高温プラズマの温度構造の解析 上へ: X線による宇宙観測 戻る: X線による宇宙観測

楕円銀河の重力ポテンシャルの精密測定

楕円銀河には可視光で観測できる星のほかに、 X線でのみ観測できる温度$10^7$ Kの高温ガスが存在する. 高温ガスは楕円銀河内の重力ポテンシャルによって閉じ込められており、 ガスの分布の様子がわかれば、重力ポテンシャルの構造を求めることができ るので、X線観測によって銀河に伴うダークマターの情報が引き出せる。 従来の観測により,同じ可視光光度の銀河どうしでもX線光度が1桁以上異なるこ とがわかっており,謎となっていた.

今回我々は、Chandra衛星の観測データを用いて、楕円銀河のガス分布 を調べた。Chandra衛星は位置分解能が0.5秒角と優れており、ASCAに比べ 銀河中心部でのX線放射のより細かな分布を調べることができる。 解析の結果、多くの楕円銀河でガスの分布が2つの成分で表されることがわかっ た(図5左)。 特にX線光度の高い楕円銀河では、楕円銀河のスケールを越えて広がっている 成分があり、これは楕円銀河スケールの重力ポテンシャルの他に 銀河を大きく越えた広がりを持つ重力ポテンシャルが存在していることを示してい る(図5)。 この外側まで広がった高温ガスが楕円銀河の光度の違いを作っていることも明ら かとなった. 一方,銀河の中心付近では,高温ガスのX線光度と質量は X線で明るいものも暗いものも, ほぼ同じであり,ほとんどの重力質量は星で説明できることもわかった.

X線で暗い楕円銀河は外側まで広がっている成分が少ないことから,重力質量が 小さく,ダークマターの量も少ない可能性もあるため, X線で暗い楕円銀河の1つである IC1459 をXMM-Newton衛星で観測し, 外側まで詳細に調べた. その結果,依然として暗い楕円銀河にも,光っている質量の5倍程度のダークマ ターが必要であることがわかり,ダークマターの存在は普遍的であることが確認 された.

図 4: (左図) X線で明るい楕円銀河NGC 4472のX線輝度半径分布 の二成分でのフィッティング結果.(右図)X線で明るい楕円銀河NGC 4636の質量 分布.半径0.5kpc以内はChandraで精度良く空間分解できていないが,計算値を外挿したもの.
\includegraphics[width=8cm]{4472-double.eps}
    
\includegraphics[width=8cm]{test.ps}



Yasushi Fukazawa 平成16年4月2日