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銀河団中心部の高温プラズマの温度構造の解析

過去のX線観測から銀河団のX線輝度は銀河団中心で鋭いピークを示し、 銀河団中心のプラズマ高密度領域で放射が効率良く起こり、 ガスが冷え,中心に向かって流れ込む,というCooling Flowモデルが信じられて きた。

ところが、近年の観測からICMの温度は中心に向かって低下するが、 その下がり方が緩やかで、Cooling Flowモデルから予想されている 温度分布とは異なることが分かってきた。 さらに、Cooling Flowの結果として生じるはず大量の低温ガスは 見つかっておらず、本当にCooling Flowが起こっているのかが 問題となっている。 もしCooling Flowが実際に起こっているなら、何が放射冷却を抑制して いるのか。一方、Cooling Flowが起こっていなければ、 銀河団中心の低温ガスの起源は何であるのかという疑問が生じる。

そこで、我々は、空間分解能に各段に優れ、X線分光も精度良く行える Chandra衛星のデータを用いて、銀河団中心の低温ガスの系統的性質を 詳細に調べた。 温度分布をかつてない精度で求めた結果, 温度が下がり始める半径は,実測値と冷却時間からの予測値がよく一致すること がわかり,銀河団中心部では確かに放射冷却が起こっていることが示唆された. しかし,温度はcooling flowモデルの予想とは異なり, 銀河団中心で有意に下げ止まっていることが分かり,その温度は銀河団の外側の 温度とよく相関していることがわかった。 これは銀河団中心にCoolingを抑制する未知の加熱源が存在することを 示唆しており,その加熱源は銀河団の重力ポテンシャルとも関係すること が示唆される.

図 5: (左図) 温度が下がり始める半径について,実測値と冷却時間からの予測値の比較. (右図) 銀河団外側の温度と中心部の温度の相関.
\includegraphics[width=8cm]{RcRh.ps}
    
\includegraphics[width=8cm]{tcth.ps}



Yasushi Fukazawa 平成16年4月2日