(1) 次世代ガンマ線天体観測衛星「GLAST」計画
スタンフォード大学、スタンフォード線形加速器センター(SLAC)、NASAゴダー ド・スペースフライトセンター(NASA/GSFC)などと協同で、シリコン・スト リップ検出器を大量に使った、次世代ガンマ線天体観測実験を準備している。 本年度は、GLASTの検出部の主体となる、ストリップ型シリコン検出器 の試作第2版を設計、製作した。 設計の主眼は、不良チャネルが最小になることである。 同年度末に浜松ホトニクスから納入された検出器は、従来のどの ストリップ型検出器をも一桁以上凌ぐ、不良率0.03%なる性能を達成した。
GLAST実験グループは、昨年度(平成8年度)に製作した、シリコン検出器 試作1号器をタワー状に組み上げ、CsI(Tl)カロリメターと組み合わせて SLACのガンマ線ビームでテスト実験を行なった。 その結果、設計通り性能が出ることが確認された。 これらの成果に基づき、米国エネルギー省のSAGENAP 委員会に、GLAST検出器の製作とそれを使った実験の提案をした。
(2) 銀河面の物質分布の解明
物質の大部分を占める水素は、中性水素原子として存在する場合には 電波のラインとして観測されるが、我々からの視線方向にさえぎるものがあると 観測されない。 また、宇宙においては水素は原子だけでなく分子あるいはプラズマとして存在 しているものも大きな割合を占める。 水素分子は、同じ場所に存在するCO分子のライン強度から重元素比を仮定すれば 水素の量がわかるが、仮定に伴う不定性が残る。 またプラズマの場合は、その放射が星間吸収を受けやすい。 以上のように、X線よりエネルギーの低い側での観測では我々の銀河の水素の絶対量を求める 際に不定性が残るが、水素原子核が宇宙線と衝突して放射される高エネルギーγ線は 吸収に対して強いので、水素の絶対量を求めることに対して強い武器となる。 我々の研究室では、CGRO衛星搭載の高エネルギーγ線検出器EGRETのデータを 多波長のデータと比較することによって、我々の銀河の物質(主に水素)の量と 分布を調べようとしており、現在その手法およびデータベースを作成しつつある。