本年度は,実際に簡易コンプトンカメラを試作し,イメー ジング能力および偏光能力を確認した。 ここでは,まず想定されるカメラとして両面SSDとCdTeで構成したものを試作し たが,すぐに壊れてしまったため,次に両面SSD2枚で構成したものを試作した。 もう1つ,PDアレイとGSO+位置検出型PMTで構成したカメラも試作し,外壁の性 能も調べた。
(a)両面SSDとCdTeピクセルを用いた簡易コンプトンカメラのイメージングおよび偏光測定能力の評価(常温)
DSSD(0.8mmピッチ,32ch)と宇宙研のCdTeピ クセル(2mmピクセル,64ch)と組み合わせてカメラを構成した。 このカメラをSpring-8のガンマ線ビーム施設に持ち込んで,性能測定した. ガンマ線ビームは,ほぼ100%偏光しているので,偏光能力の測定も行なった. ビームが強すぎるので,一度アルミ板で90度散乱させてコリメートしたものを カメラに入射させた. ガンマ線のエネルギーは,散乱後に177keVとなる. 常温化で動作させたので,DSSD, CdTeのエネルギー分解能は,それぞれ5, 7keVと悪い. さらに,実験直前になってDSSDのn側のVA32TAが壊れてしまい,p側だけ のデータとなってしまい,今回はDSSDは1次元情報しか与えないにもかかわらず, modulation factorは,45%を得た(図4). DSSDのn側も読み出せていれば90%近いmodulationが得られているはずで あり,コンプトンカメラが非常に性能の良いガンマ線偏光測定器であることが確 かめられた.
|
(b)両面SSD2枚を用いた簡易コンプトンカメラのイメージングの評価(低温)
DSSDとCdTeを組み合わせたカメラは,n側のVA32TAが壊れてしまったので, 新しく両面DSSD2枚(0.4mmピッチ,64ch, 0.3mmt)を用い た簡易コンプトンカメラを構成して,きちんと冷やした状態での性能を調べた. 数100keVのガンマ線に対しての方が角度分解能が良くなるのだが,実験室で使う 放射線源は弱いので,高いエネルギーのガンマ線はDSSDで光電吸収しにくく実験 にならないので,今回はCoの122keVをコリメートして当てた.
図5にコンプトン再構成した角度分布を示す.FWHMは8.2度であっ た. これが妥当であるか確かめるため,Geant4 simulatorを用いてドップラー広がりと エネルギー分 解能1.3keV,位置分解能0.4mmを考慮してシミュレーションを行ない, そのデータについて同じようにコンプトン再構成したところ, FWHMは7.9度となり,ほぼ実験と同じになった. よって,実験値は妥当であり,カメラが正しく動作していることがわかった。 よって,500keVのガンマ線に対しては,角度分解能が2度くらいになることが 期待される.
(c)PDアレイとGSOと位置検出型PMTで構成した簡易コンプトンカメラのイメージング性能評価
外壁をGSO/BGOにした場合のコンプトンカメラを想定した実験を行なうため, 散乱体にのフォトダイオードアレイ(1つ mm)を用いて シリコンストリップを模擬し,吸収体にGSO1つ( mm)と 64ch位置検出型PMTを用いたコンプ トンカメラを構成して,コンプトンイメージングを行なった. DSSDの代わりにPDアレイを用いたのは,64chPMTと同時に読み出すセットアップ の都合のためである. 用いたガンマ線は,Baの356keVである. GSOの中心付近のみで吸収されたイベントについて得られた角度分布を図6に示す. 半値幅は29度となり,予想どおりとなった. 散乱体としてDSSDを用いれば,もっと良くなり, もともと1MeV付近のガンマ線に対しては,7度近くになると期待され,外壁とし てもコンプトンカメラの役割を果たすことが示された.
|