楕円銀河の一部は、銀河群の中心銀河であることが多く、X線で光る高温プラズ マの温度密度分布から、重力ポテンシャル構造を測定することが可能となる。 銀河群や楕円銀河の中心付近における重力ポテンシャルは、これまで の観測では測定が苦しかったが、Chandra/XMM-Newton衛星によって 可能となった。 渦巻銀河の回転曲線の手法が楕円銀河や銀河群では使えないため、これまで暗黒 物質と星の分布の違いがよくわからなかったが、 50個ほどの楕円銀河の解析の結果、星が密集している中心付近は星の質量でほぼ 全質量を説明できるのに対して、銀河の外では星よりも暗黒物質が多くなる傾向 が見られた(図6)。 これは、渦巻銀河と同じ傾向である。 そして暗黒物質の分布は、いわゆるNFWモデルで予想される分布でほぼ説明でき ることがわかり、銀河団の暗黒物質と銀河の暗黒物質が同じ性質を持つこともわ かった。 また、楕円銀河には可視光では同じ明るさであるにもかかわらず、X線で明るい ものと暗いものがあることが知られていたが、 今回の解析の結果、X線で明るい銀河は銀河群に付随する高温プラズマのために 明るいことがはっきりしてきた。 一方、X線で暗い銀河の周囲には銀河群に付随する高温プラズマは見られなかっ た。 重力質量、つまり暗黒物質については、X線で明るいものも暗いものも、ほぼ同 じ分布をしていることがわかり(図7)、ほとんどの楕円銀河には銀河群スケールの暗黒 物質があることが示唆されたが、高温プラズマの量は違うようである。 明るい楕円銀河についての解析は、夫修論にまとめられた。