MeVからGeV領域を観測するアメリカの次期高エネルギーγ線観測衛星GLASTの 検出器の開発に参加している。 具体的には、γ線が対生成した電子陽電子の飛跡を追ってγ線の到来方向を測定 するトラッカー部に用いられるシリコンストリップの開発を広島大学とともに 行なっている。 本年度は、世界ではじめて、6インチのウェハ−上でシリコンストリップ検出器を 製作し、その性能を 検証した。 その後、300枚の検出器を製作し、カリフォルニア大学サンタクルーズ校と スタンフォード線形加速器センターで16層のタワーとして組み上げ、CsI(Tl)からな る電磁 シャワーカロリメターと組み合わせ、20GeVまでのガンマ線と陽子線でテストをした。
検出器は、95mm95mmと言う大きな面積にもかかわらず、低いリーク電流(数nA/cm2) と高い耐圧を示している。 テスト結果は現在解析中であるが、QL解析では問題ない性能が得れられて、 当初目標にしていたGLASTの性能を大幅に上回る見込みが出てきた。
GLASTは、NASAの最終選考で、正式にGLASTミッションの主要検出器として認められ、 プロジェクトがスタートし、釜江が検出器開発リーダーとなった。 GLASTは、1990年代に活躍したCGRO衛星搭載EGRETの成果を大幅に上回ると期待されて おり、検出される天体数も数十倍の1万個くらいになると思われており、MeV/GeV領域の 宇宙観測が飛躍的に進歩するだろう。 観測に関しては、これまでの若い回転パルサー、活動銀河核BLAZERなどに加えて、 超新星残骸や銀河団での粒子加速の解明、銀河系内の物質量分布の測定、 γ線と遠赤外線との対消滅を利用した宇宙遠方の星生成活動の測定など 多彩にわたる。 また、素粒子理論の方から、Planck scaleの現象により、光速がゆ らぐ可能性が指摘されている。これが正しいとすれば、ガンマ線バースト の 中に発見される短いスパイクを使って、光速を10-19程度の精度 で測定 できることを意味する [4][16][17]。