GLASTの性能を最大限に引き出すには、検出器の複雑な反応とバックグラウンドを 正確に理解しておく必要があり、そのために検出器シミュレーターが必要である。 我々は、高エネルギー物理の分野でよく用いられているGeant4ツールキットを用い てGLAST検出器シミュレーターを昨年度から開発しており、本年度は次節で述べる 気球実験のためのものを最初に開発した。 そして、気球実験モデルをさらに発展させて、実際に打ち上げられる検出器のジオ メトリを再現する作業を始めている。
Geant4はより高エネルギーの領域でよく使われているが、GLASTのエネル ギー領域ではあまり使われていないため、物理過程が正しく再現されているのかを 詳しく調べる必要がある。 そこで、我々はSLACとともにトラッカー部の主要な物理過程である電離損失、電子 陽電子の生成や散乱、制動放射、シャワープロファイルを実験データや理論式、さ らには今までよく使われていたEGS4ツールとGeant4を比較した。 その結果、Geant4ではシャワープロファイルが狭い、という傾向がわかり、電子の 多重散乱が正しく再現されていない可能性を見出した。 また、基本反応である電子陽電子生成に重大なバグあることも発見した。 これらは、緒方の修士論文としてまとめられた。