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突発天体およびガンマ線バーストの観測装置の開発

HXDの周囲はBGO結晶でアクティブシールドされているが、このBGOの表面積は 非常に大きいため、それ自体が優れた観測装置(Anti検出器)となり、 ガンマ線バースト、ブラックホールなどの観測 を行なうことができる。 これらの天体を常時モニターすることができる点は、GLAST衛星とよく似ており、 我々の研究室は将来的には両者を連携させたユニークな観測を目指している。

本年度は、検出器のX線に対する応答関数の構築のためのキャリブレーション実 験を進めた. 応答関数構築にはGeant4ツールを用いるが,その物理過程の検証も含めて まず小さい結晶を用いて実験を行ない,Geant4のシミュレーションと合うか調べ, 問題なことがわかった. そして,実際の検出器と同じ大きさのものについて測定を行ない,光量の場所依 存性などをシミュレーションに反映させた. そして,5年前に行なわれたAstro-E1時代のHXD全体キャリブレーションの結果を シミュレーションでほぼ再現できることに成功したが,まだファインチューニン グが必要である. こうして得られた応答関数を用いて,実際のガンマ線バーストの観測シミュレー ションを行ない,HXD-IよりもHXD-IIの方が ガンマ線バーストのスペクトルの折れ曲がり位置 を精度良く決定できることが確認され(図2),回路変更の有効性が 確認された. これについて,大野が修士論文としてまとめた。

また,Anti検出器は全天を一度に見るため,ガンマ線バースト以外の 個々の天体の明るさはわからない. しかし,全天を時々刻々とモニターするため,ブラックホールを含む 連星などX線で明るい天体が地球によって隠された前後の検出器のカウントレー トの差をとることよって,その天体の明るさを求めることができ,さらにそれを 長期間連続モニターすることができる. 本年度は,その解析をするためのソフトを開発するため,手始めに 地食シミュレーターを 作って実際にどれくらいの感度となるかを調べてみた.

図 2: HXDによって決定されるガンマ線バーストのスペクトルの折れ曲がりエ ネルギー.横軸は本当のエネルギーで,縦軸は実測予想.
\includegraphics[width=8cm]{grbsp.eps}



Yasushi Fukazawa 平成16年4月6日