銀河団の中心付近のプラズマに含まれる重元素の組成比は中心ほど大きいことが 以前のX線観測で知られていた。 その原因として、中心銀河からの重元素の放出が考えられるが、それを定量的に 決定づける観測が得られていなかった。 我々は12個の銀河団について、Chandraによって鉄の組成比の分布を詳細に調べ て鉄の質量と空間分布を精度良く求めた. 典型的なIa型超新星爆発頻度(宇宙年齢の-2乗に比例)と星の質量欠損によって 放出される鉄の質量と観測 された超過鉄の質量はほぼ合っていた(図8). よって,増加の空間スケールと鉄の量ともに、中心銀河から鉄が放出されている ことで説明できることがわかった。 以上は河嶋修士論文としてまとめられた. また、XMM-Newton衛星によってA3581という小規模銀河団の鉄の分布を銀河団の 外側までトレースして測定した。 その結果、鉄の組成比が銀河団外側で大きく減少していることがわかった。同じ く高温プラズマの温度も減少しており、 この銀河団の周囲に重元素で汚染されていない銀河間物質の存在が示唆された。 そのような物質は、ミッシングバリオンと呼ばれるこれまで観測にかかっていな いバリオン物質である可能性が指摘されている。