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ブラックホールを含む連星のハイステートの物理状態、偏光観測

ブラックホールを含む連星は、X線で非常に明るくなる時期があり、ハイステー トと呼ばれる。 ハイステートは、これまで標準的な降着円盤からの多温度黒体放射でX線スペク トルが表されると言われてきたが、最近の観測によって標準状態から逸脱した 降着円盤の時期があることが見つかってきて、very high stateと呼ばれた。 この時期は、降着円盤からの放射の一部が円盤周辺部の高温の電子コロナ によって逆コンプトン散乱されたと考えると諸々の現象が説明できるとする説 が浮上してきた。さらに、ある時期には円盤が少し膨らんだ状態になっているこ とも示唆されている。 これらのことは、2個の天体についてしか確かめられていなかったため、 我々は、このことがブラックホールを含む連星で一般的に成り立つかを調べるた め、計8個の天体について調べた結果、8割のvery high stateのデータを説明で きることがわかった。 上の3つの状態は、全X線光度に対して、円盤X線光度とそれ以外のX線成分の光度 の比をプロットしたダイアグラムで、どの天体もきれいに分類できる ことがわかった(図9)。 これらの成果は,阿部の修士論文としてまとめられた. また、very high stateが始まる時期には電波ジェットがしばしば観測されるこ とから、ジェットに伴う可視光が見えていても不思議ではない。 可視光で観測することにより、電波から可視光までの ジェットの多波長スペクトルが得られ、ジェットの様子が詳しくわかる可能性が ある。 そこで、その試みの始めとして、岡山天文台の偏光観測装置を用いて、 マイクロクエーサーLS I +61$^{\circ}$ 303の観測を行った。 この天体はガンマ線放射候補の天体でもある. 1月の観測でジェットからの偏光した成分らしきものが検出されたため、今後さ らに観測データを増やすつもりである。

図 9: 全X線光度に対して、円盤X線光度とそれ以外のX線成分の光度 の比を6つのブラックホール天体すべてについてプロットしたダイアグラム。 左側が、標準降着円盤状態のデータ。 右上が逆コンプトン散乱が支配的な時期のデータ。右下が、円盤が少し膨らんだ 時期のデータ。
\includegraphics[width=8cm]{ltot-lplt3ab.ps}



Yasushi Fukazawa 平成17年5月18日