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楕円銀河の高温ガスの重元素組成比、明るいX線源

楕円銀河は星生成が不活発であるため,新しい星はいないと考えられていた. 最近のChandra衛星によって楕円銀河にも多数の非常に明るいX線星が検出され, それらはブラックホールを含む連星であると考えられる. こうした天体は若い天体と考えられるので,謎であった. 我々は20個ほどの楕円銀河の中のブラックホールを含むと思われるX線星を 系統的に解析した結果,それらの半数は確かにブラックホールを含む連星から予 想されるX線スペクトルを示す傾向があることがわかった. また,半数ほどは球状星団に付随することもわかり(図11),球状星団の中で古いブラッ クホールと星が後天的に連星を形成したものと考えられる. 我々の銀河の球状星団には,このようなブラックホールを含む連星は まだ見つかっていないので,楕円銀河の球状星団に特有の現象かもしれないので, 興味深い. こうした傾向は少数の銀河では報告されていたが,この解析で 多数の銀河について成り立っていることがわかった. 球状星団のX線星の光度関数などを考慮した結果,後天的連星ブラックホール 天体の数が多いのは単純に楕円銀河の球状星団が我々の銀河に比べて多いことで説明 がつきそうである.これらのことは右田の修士論文としてまとめられた.

一方,楕円銀河には重力的に閉じ込められた高温プラズマが存在しており,その 起源は超新星爆発を含めた星からの放出であると考えられている. こうしたプラズマは星の中で生成された重元素を多量に含むため,それが銀河の 外に出ていって銀河団高温プラズマに含まれる重元素の起源になると考えられる. しかし,過去の観測によってX線で極端に明るくない楕円銀河の高温プラズマの 重元素組成比が非常に低く,星からの放出物とは思えないこと,銀河団高温プラ ズマの組成比よりも低いので楕円銀河が重元素放出源であることが説明できない こと,などの問題があった. 我々は,Chandra/XMM-Newton衛星で調べた結果,重元素組成比は銀河の中心付近 では問題ないくらい高い値を示すことがわかった.そして,組成比は銀河の外に なるにつれて減少していた(図13). これらのことから,過去の観測は銀河の外の重元素組成比の低い場所が混ざって 見えていたためと考えられる. また,我々の結果は,楕円銀河の周囲には可視光で銀河が見えなくても, 重元素組成比の低い銀河間ガスが存在する兆候を示すので,宇宙のミッシングバ リオン問題との関連で興味深い.

図 11: 楕円銀河の明るいX線源( $L_{\rm X}>5\times10^{38}$erg/s)の中で球状星団 に付随するものと,付随しないもののX線光度分布
\includegraphics[width=8cm]{lumino1.eps}
    
図 12: 大部分を占めるX線で極端に明るくない楕円銀河の1つNGC3923の重元素 組成比の半径分布(赤).銀河の中心ではX線で明るい銀河NGC4472(黒)と同じ重元素 組成比だが,銀河の外側で大きく組成比が減少する.
\includegraphics[width=8cm]{n3923ab.eps}



Yasushi Fukazawa 平成17年5月18日